変形性膝関節症

knee osteoarthritis

変形性膝関節症とは

膝関節とは

膝関節とは

​​膝関節は身体で最大の関節で、3つの骨(大腿骨、脛骨、膝蓋骨)から構成されています。3つの骨は、膝の曲げ伸ばしや身体を安定させる等、日常生活で重要な役割を担っています。

この3つの骨の表面は、なめらかな軟骨で覆われています。軟骨は関節の摩擦を減らすためのクッションのようなもので、関節を傷つけずに膝を動かす役割を担っています。
この軟骨がすり減り、膝に痛みが生じることを「変形性膝関節症」といいます。

変形性膝関節症の原因

変形性膝関節症は、原因がはっきりしない「一次性(原発性)」と原因が特定出来る「二次性(続発性)」の2つに分けられます。
「一次性」は、加齢や慢性的な刺激により徐々に進行するケースで、変形性膝関節症の多くがこちらに当てはまります。例えば軟骨の老化で弾力や水分量が少しずつ失われたり、女性の場合は加齢により女性ホルモン「エストロゲン」の分泌量が減少したりすることで、軟骨が擦り減ると考えられています。軟骨・骨・筋肉が健康に保たれるにはエストロゲンの働きが必要とされているため、変形性膝関節症の患者数は女性の割合が多い傾向にあります。
また立ち仕事、長距離歩行、肥満、膝を酷使する激しいスポーツ等の「慢性的な刺激」でも、徐々に軟骨がすり減って症状が出ると考えられています。
一方で「二次性」は、外傷・関節リウマチ・痛風などが原因で、関節軟骨に痛みが出ます。

変形性膝関節症の症状

変形性膝関節症の症状

変形性膝関節症の主な症状は、「膝の痛み」「膝に水がたまり腫れること」です。
関節軟骨がすり減ると、歩行や立ち上がりの時に膝が痛みます。症状が進行すると、痛くて階段の昇降や正座が出来なくなるなど、膝の動きに制限がかかってきます。更にO脚が進行し、脚の変形も進みます。
また、膝に水がたまり腫れることがあります。関節の中に炎症が起きると、関節液が多量に分泌されるためです。「膝を曲げると突っ張る感じがある」「膝全体が腫れている」などの症状がみられる場合、膝に水がたまっている可能性があります。
これらの症状を放置すると、膝の骨が変形して痛みが強くなったり歩行困難となったり、日常生活に支障をきたす恐れがあります。そのまま生活やスポーツを続けるにはリスクがありますので、整形外科を受診することをおすすめします。

変形性膝関節症の
治療

変形性膝関節症の治療では、「軟骨がすり減るスピードをいかに遅らせるか」が重要です。
当院では患者さんそれぞれの症状や変形の程度、年齢などによって最適な治療方法を選択し、オーダーメイドの治療を行っております。

手術以外の治療(保存療法)

初期の段階では、手術を行わず保存療法をとることが多いです。
まずは膝の痛みを和らげるため、鎮痛薬の服用やヒアルロン酸やステロイドの注射を行います。また、超音波・レーザー・空気マッサージ器・電気などを使って鎮痛処置を施し、痛みを軽減させます。
痛みの軽減後にリハビリを行います。当院のリハビリでは運動器専門の理学療法士が、患者さんそれぞれの身体の癖や生活環境を考慮した上で「生活指導」「運動療法」を行っています。例えば、正座や膝への負担が大きい動作を避けるようアドバイスをしたり、杖・膝固定サポーター・足底板などの装具の使用をおすすめしたり、有酸素運動や筋力強化のための訓練を行ったりします。
また、ヒアルロン酸注射などこれまでの保存治療にて効果が見られない場合、新しい治療として、ひとが生まれながらに持っている自然治癒力を利用した「再生医療」という選択肢もあります。当院では、PFC-FD™療法を行っております。
PFC-FD™療法に関する詳しい情報は下記リンクに掲載されていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

手術療法

保存療法を半年以上続けても効果が現れない場合や、変形が進行し痛みが強くなってきた場合は手術を行います。
手術法には「膝周囲骨切り術 」「人工関節置換術」があります。

膝周囲骨切り術

最大のメリットは人工関節と異なり、膝関節を温存できることです。関節温存により、関節可動域も温存され、重労働やスポーツへの復帰も可能です。
骨切りによって、下肢アライメントを矯正し、疼痛の軽減を図る手術です。多くの場合、O脚変形により内側に偏った負荷を、骨を切り角度を変えて外側に移動させます。
骨がつながり痛みが軽快するまでには、3ヶ月〜半年ほど時間がかかります。
術後は筋力トレーニングや関節の曲げ伸ばしといったリハビリを行い、日常生活への復帰を目指します。

手術時間 およそ3時間(麻酔時間を含む)
入院期間 およそ3週間

人工関節置換術

損傷した部分を削って関節を露出し、ポリエチレンと金属で作られた人工関節に置き換える手術です。
人工関節置換術には、膝関節を全体的に置換する「人工膝関節全置換術」と、膝の内側のみを置換する「人工膝関節単顆置換術」があります。
人工膝関節全置換術は、膝を約15cm切開して人工関節をはめ込みます。人工膝関節単顆置換術は、損傷が膝の内側のみの方が対象で、膝の内側を約7〜10cm切開します。

手術時間 およそ3時間(麻酔時間を含む)
入院期間 およそ3週間

変形性膝関節症に
関するよくある質問

どんな人に多い疾患ですか?
膝関節に負担のかかる仕事やスポーツをしている方がなりやすい疾患です。
例えば、重い荷物を持ち運ぶ運送業や建設業、長時間立ち姿勢の接客業、介護職などの保健衛生業、しゃがみ込む姿勢の多い農業などの仕事です。スポーツではサッカーやテニスなどが、急に立ち止まったり走り出す動作が多いため、膝への負担が大きくなります。
他には、運動を普段全くしない人で、急に長時間の運動をするような方も注意が必要です。例えば、登山や旅行などで長時間歩くと膝関節に大きな負担がかかり、軟骨がすり減りやすくなります。
予防する方法はありますか?
適度な運動で脚の筋肉を鍛えることで、膝の負担を軽減することが出来ます。運動不足の方は筋力が弱く、膝の支えが不安定な傾向にあります。運動はウォーキングや軽めのジョギング、水泳がおすすめですが、無理のない範囲でご自宅でのラジオ体操やスクワットなどでも良いでしょう。
また、一番重要なのは「体重のコントロール」です。歩行時には体重の約3倍、階段昇降時には体重の約7倍の力が膝にかかるため、急激な体重増加は膝を痛めやすいです。肥満の方は生活習慣を見直して解消しましょう。
治療にかかる費用はどれくらいですか?
費用に関しては損傷の度合いや手術方法、入院の期間等によって変わってきます。まずは一度ご受診ください。
文責

医師井戸田 大

日本整形外科学会専門医