前十字靱帯損傷

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前十字靭帯損傷(前十字靭帯断裂)とは

前十字靭帯とは?

前十字靭帯とは?

​​膝前十字靭帯は、太ももの骨である大腿骨(だいたいこつ)と、すねの骨である脛骨(けいこつ)をつないでいる膝の靭帯です。主に歩く、走る、飛ぶなどの運動時に膝を安定させる役割を担っています。
この膝前十字靭帯が損傷、断裂することを「膝前十字靭帯損傷」「膝前十字靭帯断裂」といいます。

前十字靭帯損傷の原因

前十字靭帯損傷の原因

膝前十字靭帯損傷は主にスポーツ中、膝に大きな負担がかかった際に起きやすく、その原因から「接触型」「非接触型」に分けられます。
「接触型」とは、ラグビーやサッカーなどのコンタクトスポーツにおいて、膝が他の選手とぶつかることで、本来曲がってはいけない方向に曲がることで受傷することをいいます。
「非接触型」とは、スキーやバスケットボールなどのスポーツにおいて、ジャンプの着地の衝撃などによって他の選手との接触なしに受傷することをいいます。
受傷時には、膝がずれた感じがするだけでなく、「ブツッ」「ガクッ」といった音(断裂音)を感じることもあります。強い痛みを感じるため、数分間うずくまってしまい、その場から動けなくなってしまうことが多いです。

前十字靭帯損傷を起こしやすいスポーツの例

  • サッカー
  • ラグビー
  • バスケットボール
  • バレーボール
  • ハンドボール
  • アメリカンフットボール
  • スキー
  • 柔道 など

前十字靭帯損傷の症状

前十字靭帯は関節の中にあるため、靭帯から出血し関節の中に血液がたまります。そのことにより膝は腫れ、曲げ伸ばしがしにくくなります。受傷して数週間もすると症状が改善し痛みも軽減してくるため、歩いたりジョギングすることも可能な場合があります。このことから病院に受診するのが遅くなってしまう人も多くいます。
しかし、関節の安定性が失われた状態であるため、膝が不安定に感じたり、膝崩れを起こすこともあります。また、全力で走ったり、踏ん張ったりする動作には怖さを感じます。
損傷した前十字靭帯は修復能が低いため完全に自然治癒することは難しいです。そのままスポーツを続けるにはリスクがありますので、受傷後すみやかにスポーツ整形外科を受診することをおすすめします。

前十字靭帯損傷の
治療

膝前十字靭帯は関節の中にあるため血流が少なく、断裂・損傷すると、自然に治癒することはほとんどありません。
損傷の度合い、スポーツの種類や、主なポジション、年齢などによって治療方法を選択します。

手術以外の治療(保存療法)

損傷の度合いが軽い場合や、中高齢者の方の場合は手術を行わず、保存療法を行うことがあります。サポーター(装具)をつけて膝を安定させた状態でトレーニングを行いながら、膝関節の安定性を取り戻していきます。

手術療法

前十字靭帯損傷の治療法の一つとして、他の部位の腱(自家腱)を移植する「前十字靭帯再建術」があります。

前十字靭帯再建術

前十字靭帯は、修復能力が低いため切れた靭帯を縫い合わせるという方法ではなく、患者さんの体の他の部位から、移植に適した腱を一部取り出し、新たに靭帯を作り直す『靭帯再建術』を行います。当院では、全身麻酔にて行います。膝関節を大きく開くのではなく、関節鏡という内視鏡を用いて行います。そのため、傷口が比較的小さくてすみます。

手術時間 およそ2時間
入院期間 およそ2週間

リハビリテーション

リハビリテーション

前十字靭帯手術ではリハビリが非常に重要です。前十字靭帯損傷を受傷すると早期から関節の動きが悪くなったり、膝周囲の筋力低下が生じることが多くみられます。術前からリハビリを行い、手術までに関節の動く範囲を正常な状態に戻し、筋力を少しでも正常に近い状態にしておくことが重要です。また、術後もリハビリを継続し、定期的に筋力をチェックして、回復状態の確認をします。当院では、筋力測定装置BIODEX NORM®を用いて、正確に筋力評価を行っています。最終的にはスポーツ種目に応じて、それぞれに必要な動作訓練を含めたトレーニングを行い、競技復帰を目指します。

前十字靭帯損傷に
関するよくある質問

試合に復帰するためには手術からどれくらいの期間がかかりますか?
損傷の度合いや、スポーツの種類にもよりますが、一般的には、手術後8~10カ月ほどかかります。当院では専門のリハビリスタッフが術前から競技復帰までサポートいたします。
仕事に復帰するには手術からどれくらいの期間がかかりますか?
座り仕事の場合は、退院後から可能です。入院期間は、術後経過により変わりますが約2週間です。長時間の立ち仕事や力仕事の場合は、担当医師やリハビリスタッフが患者さんの状態を見て判断いたします。
治療にかかる費用はどれくらいですか?
費用に関しては損傷の度合いや手術方法、入院の期間等によって変わってきます。まずは一度ご受診ください。
文責

医師井戸田 大

日本整形外科学会認定スポーツ医